定山渓鉄道資料集

【定山渓鉄道沿線百話 その一二 「キロポスト」】

 

 キロポストとは、路線の起点からの延長距離を記した線路際に設置される標識のことです。鉄道のみならず、道路沿にも標識を見つけることがあります。高速道路は一〇〇メートルごとにありますね。

 定山渓鉄道では白石~東札幌間が廃止となったのち、東札幌駅を起点として定山渓停車場まで五〇〇メートルごとに合計五六本のキロポストが設置されていました。

 

 鉄道会社によってその形は様々ですが、定山渓鉄道が使用していたキロポストは、長さ約二メートル、幅一八センチ角の四角柱をタテに対角線でカットした形をしており、狭い方の二辺に数字が彫られたコンクリート製でした。キロ単位の標識はその数字が直接彫り込まれて黒塗り、中間の五〇〇メートル標は「1/2」の部分が彫り込まれてその下に小さくキロ数値が黒ペンキで描かれました。三本の鉄筋と補強の針金により頑丈に作られているので、相当な重量がありました。地表から出ている部分はおよそ一メートル弱くらいで、ほぼ同じ長さ分だけ地中に埋められていることになります。それだけ重要な標識ということが言えると思います。

 

 さて、昭和四四年一〇月いっぱいで営業廃止となり、翌日から線路の撤去作業が始まりました。線路が枕木から引きはがされ、枕木も次々にトラックへと積み込まれるのですが、なぜかこのキロポストはすべてが撤去されたわけではありませんでした。道路や建物へ再開発された場所にたまたま所在地が重なっていた場合を除き、今でも立ち続けているものもあるのです。平成一二年頃に確認した際には、一二本のキロポストがそのままの場所で残されていました。しかしながら、その後の一〇年くらいの間に道路拡幅工事などで消滅したものもあり、現在では確認できたもので八本と減ってしまいました。

 

 残されたキロポストの中で、特徴的なものをいくつかご紹介します。

『8km1/2』

 もっとも札幌市街地に近い場所にあるキロポストで、地下鉄真駒内駅の待避線から先の線路跡に今でも立っています。夏は笹薮に覆われ、林の中とあって薄暗いため

見落とすことが多いのですが、春先や晩秋には容易に見つけることが可能です。ペンキはもうすでに落ちていて、また撤去の痕跡なのか部分的に欠けていたりします。ここは札幌市への一括譲渡された区間にあるため、もしかすると当面残る可能性の高いキロポストです。

 

『20km』

 ある意味、もっとも見に行きづらいキロポストだと思われます。それは、道路から離れアクセスが困難な場所にあるからです。豊滝停留場と滝の沢停車場との間、豊平川の断崖の上に敷設された区間に位置し、現在ではこの20kmポストの前後は毎年の雪解け水などによって路盤流失した場所も多く、容易には近づけない場所になりました。ちなみにこの区間ではもう一本、『20km1/2』のポストが現存し、こちらは滝の沢停車場跡より二七〇メートルほど豊滝寄りのところに残されています。ただし夏ともなると相当の藪漕ぎを強いられることと、クマの出没も噂される場所なのでアクセスが困難であることに変わりはないようです。

 

『24km』

 こちらは残念ながら現在は見つけることができません。場所は豊平峡発電所のほぼ向かいあたりになり、国道からもそう離れていない場所なのですが、国道拡幅工事の影響で線路跡地際が整地されたため、その際に処分された可能性があります。

 実は、このキロポストを見つけた時は大変衝撃的でした。なんと白樺の根から生えているかのような状況だったのです。もちろん白樺は廃止になった後に自生したものなので、たまたまポストの足元に根付いてしまった結果なのですが…

 

 残されたキロポストがいつまで存在できるかはわかりませんが、定山渓鉄道が生きていた時代を伝える、最後の遺構と言えるかもしれません。

 

写真は現存していると思われるキロポストの、2002年頃撮影の集合写真です。

 

※内容はあくまでも現時点までの研究成果による執筆者の主観です。新情報などで不定期に内容を更新する場合があります。予めご了承ください。

 

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