旧道フォトグラフス Vol,6

幹線の証し 旧平岸街道の道路標識 (札幌市豊平区)

写真 文 ・ 根布谷 禎一


 僕の親爺がホンダのM360を購入して、ものすごいエンジン音を立てて狩勝峠を越えていた頃、そう今から35年ほど前は、薄黄色をベースに赤色の矢印と黒字で「○○ △△Km」と書かれた道路標識の全盛時代であった。それが何時の間にか、現在の青色をベースに白地の文字の標識になってしまっていた。当時の標識は一体どうなってしまったんだろう。あの独特の字体は今改めて思い出してみると、完全に手書きの看板のようでもあったのだが・・・・。

 そうした中、アルバムに15年前の札幌市街を撮影した写真を見つけた。
その写真は平岸街道と国道36号線とが合流する交差点付近(豊平4条5、6丁目)で撮影した2枚である。
 ひとつは、平岸街道を北に向かう標識で、それには「札幌3km 千才35km」と書いてある。現在であれば当然「千歳」と書くであろう。それを「千才」なんて、当時はそう書いていたのであろうか?いやいやそんなコトはないはず。文字の省略形にしても今では「千歳」を「千才」と書く人はめったにいないであろう。

 もうひとつは、平岸街道を南に向う標識で、「真駒内6km 常盤15km」と書いてある。「真駒内」は理解できるが、何故に「常盤」なのか?15年前には「常盤」ってそんなに交通の要所だったっけ?そうして「真駒内」の「駒」の字の馬の点4つを横一文字に省略しているという、極めて大胆な表現方法も用いている。さらに2枚の標識はいずれも人家の真横で、しかも僕の頭がこすってしまいそうな高さに、まるで商店の看板のように立っている。

 今改めて眺めて見ると、おかしな道路標識である。今から15年前にはこんな不思議一杯の標識が溢れていたなんて、愉快な時代である。